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Special特集

COLUMN - 浮世絵とは芸術じゃない、エンターテインメントだ! -

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浮世絵版画は今日では日本美術を代表する美術品として全世界で展覧会が開催され、一流オークション会社で高額の売買がなされています。しかし、もともとは芸術など意識することはなく、江戸庶民の好みや流行を何とか捉えて、人々が喜びそうな、買ってもらえそうなものを次々に発表していく、いわばエンターテイメント産業でした。

喜多川歌麿 名所腰掛八景
   喜多川歌麿 名所腰掛八景

大量生産できる浮世絵版画は、そば一杯の値段で販売され、テレビやスマホもない時代に一般庶民が気軽に購入できる唯一のカラフルでビジュアルな商品でした。江戸市中で噂が持ちきりの美人、大当たりした歌舞伎で見得を切る千両役者、一度は行ってみたい観光名所とその道中、向かうところ敵なしのイケメン力士などが次々と描かれ出版されました。江戸庶民をターゲットに作られていた浮世絵版画は、江戸に出入りする商人や参勤交代の武士などによって日本全国に広まっていき、地方で江戸に憧れる人々を魅了していきました。例えば江戸の商人は地方に商品を買い付けに行くときに浮世絵版画を手土産に、今江戸ではこのような人、物、芝居、名所などが大流行していると商家の若旦那に話をします。いつの時代も若者は大都会に惹きつけられるもので、彼らは目を輝かせて浮世絵版画に見入っていたことでしょう。また江戸後期にもなると浮世絵版画は海外に流出し始めます。西欧から見れば地球の反対側の島国の日本はミステリアスな存在で、いろいろな文物が輸出されていきました。その中で浮世絵版画は安価で入手も持ち運びも容易なこともあり大量に持ち出され、直ぐに西欧でも人々を魅了したことは間違いありません。まだ葛飾北斎が生きていた1830年代にはすでにオランダで浮世絵の展覧会が開催されています。


やがて19世紀末には西欧で「ジャポニズム」の大熱狂が巻き起こりますが、そのきっかけも浮世絵版画であることが知られています。ついに浮世絵版画は世界中の人々を魅了する商品となりました。そもそも競争が激しく、互いに切磋琢磨され続け、彫り・摺りにも最高の技術を駆使して製作されていたので、人気の高かった図柄はすでに芸術の域に達していました。いち早く浮世絵版画の芸術性を認めたのは日本ではなく西欧の人々だったのです。明治維新以来文明開化が進み、急速な西欧化を急いでいた日本では浮世絵版画は急速に衰退していきました。浮世絵版画は速報性では新聞に、写実性では写真に、土産物としては絵葉書に、その役目を奪われてしまったからです。そして何よりも日本画、油絵、水彩画などの隆盛に押され、浮世絵師を目指そうとする人がいなくなってしまったのが致命的でした。

写楽、芝増上寺
写楽 石部金吉               川瀬巴水 芝増上寺

大正時代初めには文芸誌の口絵・挿絵に浮世絵版画の技術が用いられるだけで浮世絵版画は絶滅寸前となってしまいました。一方国内とは裏腹に海外での浮世絵版画人気は高まる一方でした。明治末に京橋で創業した私の祖父・渡邊版画店の渡邊庄三郎は外国での浮世絵人気に目を付け、芸術を意識した新しい浮世絵版画を制作し外国へ販売していこうと考えます。橋口五葉や伊東深水・川瀬巴水といった画家がこの新しい浮世絵に賛同し次々と作品が生まれました。後年この新しい浮世絵版画は「新版画」と言われるようになりました。関東大震災後は全世界的には大恐慌の時代でしたが、この「新版画」は米国を中心に飛ぶように輸出されていきました。すると昭和初期には一度は版画をやめていた版元が営業を再開し、画家が版画の良さを理解し自分で工房を設けて作品を制作していくようになりました。
関東大震災以後第二次大戦までの僅か10数年の間でしたが、浮世絵版画はあたかもルネサンス期を迎えたように復活しました。この時代には外国向けに江戸回顧趣味のものと国内向けに新しい時代を反映したモダンなものとが同時に制作され、画家の個性と芸術性が江戸・明治期のものより強く表現されています。「新版画」の登場により浮世絵版画の歴史は100年は長続きし、今日まで続いていると言えるのではないでしょうか。


(文)
渡邊 章一郎(わたなべしょういちろう)

プロフィール
昭和33年(1958)東京生まれ
昭和56年(1981)慶應義塾大学商学部卒業
昭和61年(1986)家業の(株)渡邊木版美術画舗(通称・渡邊版画店)に入社
平成5年(1993)代表取締役(三代目)に就任。今日に至る。

東京伝統木版画工芸協同組合 副理事長
国際浮世絵学会 常任理事
「開運 なんでも鑑定団」鑑定士



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