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Special特集

COLUMN - 「大田原愚豚舎、創るということ」 -

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僕が映画音楽を書き始めたのは、 日本映画大学の前身である、日本映画学校の卒業制作作品『八月の軽い豚』という作品で、兄である渡辺紘文が監督した作品です。
その作品が僕が初めて書いた映画音楽です。
僕自身はその時期、 音楽大学でクラシック音楽のピアノを専門的に勉強しており、 はじめて書いた映画音楽も 、ピアノを使った クラシック的な要素の強い作品でした。
クラシック音楽に影響を受けた作品は今でも書くことが多いです。

その後、兄と2人で純粋に映画を作りたいという思いから、“大田原愚豚舎”という映画制作団体を立ち上げました。
映画制作団体と言っても、小さな団体で、総スタッフ人数は、最初の作品『そして泥船はゆく』は4人で、後の『七日』『プールサイドマン』『地球はお祭り騒ぎ』は3人という、 少人数体制の映画制作団体です。
初めのうちは、そんなに少人数で映画が撮れるのか? と、僕自身も不安がありましたし、何よりも僕は映画の現場などは行ったことがないので、ほとんど手探りの状態で、少しづつ映画作りを始めていきました。
やってみると、体力的に大変なこともたくさんあるのですが、映画が少しづつ形になっていくのを目の当たりにし、映画を作るのは面白いなと思うようになりました。
そして、そういった中で“大田原愚豚舎”第一回作品の、『そして泥船はゆく』を完成させました。

その後、作品を上映しようと考えていたのですが、まだどこでも上映していないのだから、映画祭にエントリーしてみようと決めました。
(映画祭にエントリーする作品の規定は例外はありますが、ワールド・プレミア(世界で最初に作品を披露する)が、主に基本です。)
そう思い立ってから、毎日様々な映画祭に応募していたのですが、なかなか映画祭には通らず、「そろそろ映画祭は諦めて、自主的な上映をしていこうか。」と兄と一緒に相談していたところに、東京国際映画祭への出品のお話しがありました。
その後、『そして泥船はゆく』は、 2013年の東京国際映画祭において正式に出品されることとなり、これ以上ない形で作品をお披露目する機会を得たのでした。

撮影現場と東京国際映画祭

“大田原愚豚舎”が製作した長編映画『そして泥船はゆく(2013)』『七日(2015)』『プールサイドマン(2016)』『地球はお祭り騒ぎ(2017)』は、四作連続で東京国際映画祭への正式出品を果たし、『プールサイドマン』では東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門の最高賞である作品賞を受賞。
さらに世界最大の日本映画際ニッポンコネクションにおいて、ニッポン・ヴィジョンズ審査員賞 NIPPON VISIONS JURY AWARD 2017を受賞しました。
また、それぞれの作品が、世界各国の映画祭に招待していただき、様々な人に作品を見ていただく機会を得て、その作品群は国内外で高い評価を受けました。
全ての作品に自分の書いた曲が使われており、その1つ1つ、全てが僕の大切な作品です。

僕が自分の作品を作る信条で大事にしていることは、『自由『『伝統』『情熱』、そして、誰かに評価されるよりも自分が楽しめるものを『創る』ということを優先して音楽や映画を創るということです。
それが結果的に最良の答えなのではないかと考えます。
自分の作品を楽しんでもらえても、また、そうでなかったにしても、そのことを気にすることはありません。
たとえば、相手の方が好きな作品を僕が全く好きでないにしろ、それはその人の自由であり、そのことについて、僕がとやかく言う必要は無いと考えるのです。
それは相手の側から自分を見たときにも、全く同じことが言えるでしょう。
僕たちが作品を『創る』ときも、まずやってみる。ということを大切にしています。
そして何よりも、『創る』というプロセスは面白いものです!

今まで作品を作ってきて思うことは、良い結果、悪い結果を先に考えてしまって、行動をしないのは本当にもったいないということです。
頭であれこれ思い悩み、結果を考えて動かないより、思い立ったら行動、実行してみるというのが、創作の基本です。
僕達はそういった考えで、今まで作品を作ってきました。
今でも「これをやってみたら面白いんじゃないか。」ということが、映画や音楽を創りはじめる最初のステップです。

東京国際映画祭

今現在、たくさんの人に読まれている本、吉野源三郎氏の著作、『君たちはどう生きるか』には、こう書かれています。
「自分が消費するものよりも、もっと多くのものを生産して世の中に送り出している人と、何も精算しないで、ただ消費ばかりしている人と、どっちが立派な人間か、どっちが大切な人間か。
生み出してくれる人がいなかったら、それを味わったり、楽しんだりして消費することはできない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。これは何も、食物とか衣類とかいう品物ばかりのことではない。
学問の世界だって、芸術の世界だって、生み出していく人々は、それを受け取る人々よりはるかに肝心なんだ。」
『創る』という行為は、映画、音楽、絵画、文学などの、一般的に言われている芸術に限らず、私たちの身の回りにあるもの、生きてゆくために必要なもの、全ては誰かが『創った』ものです。
そしてそれが現在の文化を形づくってきたと、僕は個人的に考えます。

現代を生きる私たちにとって、過去の伝統を重んじ省み、その過程を経た現在で2018年の今、自分たちに何が出来るかを考えるのが最も重要だと思います。
そして僕たちにとってそれは、新しい作品を作り続けることです。
「すべての創造の根源にある思索的意思の原理を判断し、論じ、批判するのは、明らかに無駄なことです。
純粋な状態において、音楽は自由な思索です。私自身創造者として、創造する欲求をもたずにはいられません。
創造プロセスの研究は極めて困難です。そのプロセスの内奥の展開を外側から観察するのは実際不可能です・・・。
真の伝統は過ぎ去った過去の証言ではありません。
それは現在を活気づけ、現在を知らせる生き生きとした力です。」
とはロシアの作曲家ストラヴィンスキー氏の言葉ですが、芸術とはまさに、人間が持つ自由な思索に他ならないと言うことができます。
そして真の伝統を持った優れた作品は、現代を生きる私たちにとって意味を与えるからこそ、時代を超えて私たちを感動させるのだと思うのです。
自分も今後、歩みを止めることなく、少しづつ『映画』や『音楽』で新しいことに挑戦していこうと思います!


渡辺雄司

(文)
渡辺雄司/Yuji Watanabe

プロフィール
作曲家。映画音楽家。映画プロデューサー。
1985年栃木県大田原市生まれ。映画監督・渡辺紘文の実弟。
宇都宮短期大学附属高等学校音楽科卒業。武蔵野音楽大学器楽学科ピアノ専攻卒業。
大学在学中より作曲家・映画音楽家として活動をはじめる。
『八月の軽い豚』『桟橋』『狂人日記』『そして泥船はゆく』『七日』『プールサイドマン』『地球はお祭り騒ぎ』など、これまでの渡辺紘文の映画作品、舞台作品全ての音楽監督を務めている。
また、映画プロデューサーとしては、製作した全ての作品『そして泥船はゆく』『七日』『プールサイドマン』『地球はお祭り騒ぎ』が 東京国際映画祭への4作連続の出品をはじめ、国内外の数多くの映画祭に出品されるなど高い評価を受けている。
2013年、故郷の栃木県大田原市で兄で映画監督の渡辺紘文と共に映画制作集団大田原愚豚舎を旗揚げ。
大田原愚豚舎の第一回作品、『そして泥船はゆく』の製作・音楽を務めた。
『そして泥船はゆく』は第26回東京国際映画祭を皮切りに世界各国の映画祭などに出品され大きな反響を呼び、2014年12月、新宿武蔵野館で国内初公開されると連日立ち見が出るほどの動員を記録、現在も自主上映など上映活動が続いている。
2015年、製作・音楽を務めた2年ぶりの新作『七日』を発表。
同作は『そして泥船はゆく』に続いて第28回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門に正式出品された。
2016年、大田原愚豚舎の第三作、『プールサイドマン』の製作・音楽を務める。
『プールサイドマン』は2016年10月に開催される第29回東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門へ正式出品され、同部門の最高賞である“作品賞”を受賞、その後、第52回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭、第13回ユーラシア国際映画祭など世界の有力な国際映画祭に次々と出品され、世界最大の日本映画祭ニッポンコネクションにおいてもグランプリに当たるNIPPON VISIONS JURY AWARD2017を受賞するなど国内外で高い評価を獲得した。
また、同年には山内ケンジ監督が手がけた、静岡新聞SBS CM 超ドS「静岡兄弟」篇の音楽を作曲、同CMは第54回ギャラクシー賞でCM部門の大賞を受賞している。
2017年、4本目の大田原愚豚舎作品、『地球はお祭り騒ぎ』の製作・音楽を務める。同作は第30回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門へ正式出品された。
クラシック音楽の作曲家としても、TIAA全日本作曲家コンクール室内楽部門入選、及川音楽事務所第26回新人オーディション作曲部門優秀新人賞、第2回クラシック愛好家作曲コンクール2位受賞、第18回東京国際室内楽作曲コンクール最終選考作品ノミネート選出など高い評価を受けている。
現在は栃木県大田原市で渡辺雄司音楽教室の教師として活動しながら、活発な作曲活動・映画製作活動を展開している。
大田原愚豚舎(https://foolishpiggiesfilms.jimdo.com/)
渡辺雄司音楽教室(https://yujimusic.jimdo.com/)



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