Special特集

COLUMN 切り絵の世界 - 東京ミッドタウン -

東京ミッドタウン切り絵

東京ミッドタウンの作品は、読売新聞の夕刊「シティライフ」欄の紙面を火曜日ごとにA4版で飾った「切り絵で見る旬な風景」91景の中の1枚です。

全国切り絵作家協会の会員23名が参加し、平成18年6月6日から平成20年3月25日まで読売新聞夕刊に掲載されました。

切り絵は「黒い線」(面)を大切にする芸術ですから、切り絵の形式として全体が黒い線(面)でつながっていることが基本です。

切り絵は黒い線(面)で表現するということが原則ですので、それが観る人にインパクトと抒情性を与えます。日本人の持つ古くからの墨色への尊敬と親愛の思いがなぜか黒への親しみを感じるのでしょう。

私の切り絵との出会いは、朝日新聞の日曜欄に滝平二郎氏の切り絵が掲載されていました。なぜか私の心に響くものがあり、その魅力と表現力の豊かさで、私の心を捉えたのでしょう。

毎週掲載される切り絵は、自分の故郷のような、子供の頃を思い浮かべることができました。山があり、川が流れ、草花が咲き、季節ごとに変化する山や草花、そして昆虫などがいろんな色合いに変わる、そんな所で生活した時間を思い出させてくれました。

取材1回目  【平成19年2月に、ミッドタウン周辺を探索。】

東京ミッドタウンの開業は3月でしたので、工事が完成されていませんでした。この状態で絵にすることは難しいのですが、東京ミッドタウンの切り絵は5月15日の夕刊に掲載するものと決定されています。入稿はその2~3週間前です。制作には、3か月を要します。カラー作品は黒い線(面)を切った後に裏から自分で作った色の紙を貼るのです。この作業が 一番時間がかかりますから時間配分をどうしようかなど、そんなことを考えながら取材1回目は終わりました。

取材2回目  【東京ミッドタウンをどの位置から描くか、構図はどうしたらよいのだろうか。】

工事は最終段階になっている模様です。ビルの下側がまだ完成されていないのなら上からの構図にすれば良いと考えて近くのビルからの眺望にしようと思いました。
展望室があるビルは、東京タワー?いや、もっと近くのビルからの眺望が良いのでは、と探しました。
「あった。ありましたよ。そう、六本木ヒルズからの眺望だ。ここからなら東京ミッドタウンの全体が入るのでは。」
そう決定してエレベーターで展望室へ上がりました。
その日は、午前中は雨が降り、昼すぎから晴れ間が見えてくるという天候でした。この雨によって空気が入れ替わり、太陽の光がやや斜めから照らす時間です。
東京ミッドタウンが美しく輝き始めました。この瞬間を切り絵で表現しよう、この空の色と東京ミッドタウンの色合いがもっとも美しい時ではないでしょうか。
この空気、絵画空間を表現しようと心に焼き付け、帰路についたのです。



河江文比呂

(文)
河江文比呂

プロフィール
1945年 神奈川県に生まれる。
1969年 デザイン学校卒業後、デザイン事務所に勤務
1977年 フリーになり、図鑑・科学論などのイラストや図版を描く。
2011年7月現在  全国切り絵同好会理事 師範
                          全国切り絵作家協会 会員
                          全国切り絵コンクール 審査員
                          大田切り絵同好会会長 講師

受賞
1998年 上野の森美術館日本の自然を描く展 優秀賞
1999年 全国切り絵コンクール伊能忠敬賞
2001~2009年
            全国切り絵コンクール 全国切り絵同好会会長賞
            全国切り絵作家協会会長賞 特別奨励賞、他
2010年  全国切り絵コンクール 二輝会展優秀賞