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「作曲」って一体何をしているのだろう、という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかも知れませんが、その「作曲」を仕事にしている私の体験を辿りながら、少しだけ音楽のお話をさせていただきたいと思います。
私は、子供の頃、音楽の専門教育を受けていませんでしたが、中学生になってから自分の意思でピアノのレッスンに通うようになり、すっかり音の世界の魅力の虜になってしまいました。
父が買ってくれたレコードを手当たり次第聴き、「どうしてこんなに美しく、人の心を動かすことの出来る音楽が書けるのだろう」という想いが増して行く中で、いつの間にか作曲の「まねごと」を始めていました。私にとって幸運だったのは、論理を知る前に自分の感覚で音を探すことからこの世界に入っていった、ということでしょうか。
創作には論理的な思考は欠かせませんが、しかし基本はその人の持っている感性が、その作品を作り出すものだと私は考えています。これはすべての創作活動に共通することだと信じていますし、例えば私の大好きな「料理」に没頭している時もそんな事を感じることがあります。
さて、それはともかくクラシック音楽への感動と憧れから出発した私は、以後バッハの崇高で完成度の高い音楽の素晴らしさを知り、シューマンのロマンティックで繊細な感性にうっとりとし、ラヴェルの近代的で鋭く理知的な世界にのめり込む、といった風で音との付き合いは更に深まっていきました。またクラシック以外のジャンル、例えばモダンジャズは昔から大好きで今でもビル・エバンス、マイルス・デイビス等のCDを聴いて心を動かされています。
そのような経験を積んでいく中で、私が20代~30代にかけて作曲した、三好達治、等の詩による「歌曲たち」が、幸いなことにこれまで多くの歌手たちに演奏されてきたのですが、同じ曲でも演奏家によっては捉え方が違いますので、作品が自分の手元を離れて一人歩きをしている、と感じることがあり、不思議な気持ちになります。ちょうど子供が親の手元を離れて自立していくように・・・作品もそのように他人の力を借りて成長し、独り立ちして行くものなのですね。作曲する人間にとってこれ以上幸せなことはありません。
ところで私は今、「オペラ」の作曲をしています。日本ではオペラの歴史は浅く、定着している作品といえば「夕鶴」くらいのものでしょうか。今回のプロジェクトのコンセプトは「親しみ易く、口ずさめるような歌のあるオペラ」を創ろう、というものです。確かに世の中には難解な作品も多いですから、そのような考え方も良く理解できますし、私の創作の姿勢とも合致しますので今回の委嘱の話があったのでしょう。作品は日本の古い伝説を素材にした現代の物語で、現実と非現実の世界が交錯しつつ話が進んでいきます。その中には「愛」「友情」「不安」「怒り」「怨念」「滑稽さ」「争い」「死」等、人間の持つあらゆる感情模様が描かれていますので、オペラの題材としては打って付けだと、と納得しながら筆を進めています。2013年6月に公演予定の大きなプロジェクトですので、その時期が近づけば興味ある方にはお目に留まるのではないかと思います。まだ約2年先の話ですが、私自身も今からその時を楽しみにしています。
(2011年9月 記)

(文)
香月 修
プロフィール
1948年 佐賀県生まれ。
主な作品
クラリネット五重奏曲(卒業作品)
オペラ「わらしべ長者」(日本オペラ協会委嘱作品)
フルート、ハープ、チェロのための「トリオ」
「弦楽四重奏曲」
「詩曲Ⅰ-独奏ヴァイオリンのための」(後に弦楽四重奏版と弦楽合奏版を作成)
「詩曲Ⅱ-2つのヴァイオリンとピアノのための」(ミュージック・イン・スタイル委嘱作品)
「詩曲Ⅲ-ピアノ四重奏のための」(アンサンブル・アコルデ委嘱作品)
「プレリュード、アリア、フィナーレ-ピアノ四重奏のための」(ガブリエルカルテット委嘱作品)
「子供の四季-児童合唱とオーケストラのための」
また、三好達治、佐藤春夫、三木露風等の詩による歌曲作品はこれまで数多くの歌手のリサイタル等で演奏されている。子供のためのピアノ曲(連弾を含む)はピティナ等のコンクールの課題となり、全国の子供達に演奏されている。その他、合唱曲等作品多数。現在、2013年に初演予定の「オペラ」の作曲に取り組んでいる。
桐朋学園大学音楽学部教授
「日本作曲家協議会」理事
「日本現代音楽協会」及び「日本童謡協会」会員
「長野県ピアノコンクール」審査員
「日本音楽コンクール」作曲部門審査員(2011年度)
「港区スポーツふれあい文化健康財団」評議員